わたしの医工連携は、ドリルの先端にかかる力の測定から本格化しました。静岡大学工学部の機械工学科、酒井・静研究室がもう丸3年、わたしの研究を物心ともに支え、導いてくれています。
酒井先生とは、3軸動力計を使ったドリル先端の負荷の測定の件で共同研究の相談したのが一番はじめ。その時は、静先生がドイツ留学中でした。そしていよいよ帰国直後、それが補助金申請の締め切り当日、直接会うのが初めての日にいきなり、静先生のお部屋で二人で半日、申請書の修正を進め、最後の1分まで登録・修正・再登録を何度も繰り返した思い出があります。
静先生は高野山出身。わたしは京都の嵯峨出身。どちらも弘法大師さまのゆかりの地です。昨年の夏には、和歌山に研修の際、静先生のご紹介で、一乗院の僧坊に前泊でお世話になりました。めちゃくちゃ良いところでした。お山をめぐって、精進料理をいただいて、写経して、朝のお勤めに参加して。また行きたいです。浄められました。
朝のお勤めの後、佐伯公応住職のありがたい法話を頂戴しました。その中でたいへん心に留まったお大師さまのお言葉というのが、「世の為、人の為、大欲を抱いてください。」というものです。高野山というのは、日本の歴史上、大欲を抱き、大欲を成し遂げた方々の菩提所です。このお話を聞いた後、吹っ切れてここまで医工連携の道に邁進できるようになりました。今でも時に後ろ向きになることがあるのですが、部屋に飾っている一乗院の本を眺めては、『大欲』を果たそうと意を新たに歩んでいます。
こうしたい、ああしたい、どうすればいいといつも静先生に教えを乞います。こうすれば、ああすれば、こんな人いますよ会ってみますかと静先生が教えてくれます。わたしにとって、このごろは、静先生が医工連携における生きた弘法さんなのです。6月には、和歌山で日本脊髄外科学会があります。ランチョンセミナーで、講師として、兄弟子の西良先生とお話をご一緒いたします。学会が終わったら、ひとりまた、高野山で写経してさらに強くなりたいなあ。