手術はこれまで手術室で師匠から弟子に直接、言葉を介して伝えられてきました。お互いの感性によるところが大きい作業でした。今では、シミュレーターにより、手術を練習する環境は格段に改善されてきました。技の伝承は手術室から外にその舞台を移し始めています。
左は、せぼねの内視鏡手術のセミナーの様子です。右の写真は3Dプリンターでプリントアウトした腰の骨です。セミナーでの練習は、専門医取得に必須の時代となりました。手術の基本操作を習得するには練習の積み重ねがものを言います。この環境を整えるのは容易ではありません。できる限りリアルな環境を整えて、いつでも、ちょっとした時間に練習できるようにするというのも、わたしの仕事の一つです。
手術室で実際に使っている内視鏡、ドリルなどは高価でたいへん壊れやすいものです。なかなか手術用の本番の道具を持ち出して練習するわけにはいきません。そこで、練習キットを購入することになりますが、そのほとんどが輸入品です。セミナー開催時に準備した内視鏡はドイツ製、使用した模型はアメリカ製。ドリルは唯一、株式会社ナカニシ、国産です。https://www.medicalexpo.com/ja/prod/nsk-surgery-69561.html
模型はいつも手元に常駐しています。3Dプリンターで作れる時代になっており、手術前にプリントアウトして手術戦略を練ることに活用することができます。保険償還が可能なのですが、外注で良い製品をお願いするとなりますと、まだまだコスパが?という状態です。自分でやるしかないのが現状です。病院の画像参照できるパソコン上で3Dプリント用のファイルが作れる、3Dプリンターがドクターのオフィスにあるという環境の整備ができているところはまだ少ない状態です。
自分で作った患者さんのリアルな模型で、自分もちの壊れても問題のない内視鏡とドリルで、本番さながらの手術の練習をする。いつも必ず練習して、戦略を万全にした状態で本番を迎える。頭の中でしかできなかった手術シミュレーションを、手を実際に使って、本番とほぼ同じ道具で、実物大のモデルで仕上がりを確認する。これが当たり前の時代はすぐそこに来ています。