わたしの専門は、腰椎椎間板ヘルニアの外科治療です。内視鏡を使って手術をおこなっています。腰椎椎間板ヘルニアになったら、みんな手術というわけではありません。一般的には、お薬を飲んだり、ブロック注射を受けたり、リハビリをしたりでほとんどの人が治ります。手術には、他の治療と違う特徴があります。ご存知の通り、発生すると困る合併症・後遺症があります。ですから、「手術は最終手段です。」といつも説明しています。
https://www.suzukake.or.jp/central/about/chikara/file/2983/35広報誌2021夏号.pdf
腰椎椎間板ヘルニアのひどい痛みは主に、①神経障害性疼痛:飛び出したヘルニアが神経を機械的に圧迫して出る神経痛や痛みを引き起こす原因になる物質で刺激されて出る神経痛、②侵害受容性疼痛:神経痛に関連した筋肉や関節由来の痛み、③心理社会的疼痛:この痛みの原因は何だろう?もう動けなくなるんじゃないか?仕事続けられないんじゃないか?家族に迷惑かけるんじゃないか?と痛みによって惹き起こされる心理的な痛みの3つの成分が配合されています。まず、この痛みをいろいろな方法で軽くします。
①、②はお薬を飲んだり、ブロック注射をしたり、痛みが少し軽くなってきたらリハビリで動かしながら治したりと、ご存知の通りです。神経痛の薬は、良いものが開発されて、選択肢が増えました。わたしが医師になった頃にはなかったので、この治療の選択肢が少なく、自然に治るまで時間を凌ぐのがたいへんでした。今は、薬やブロックでの治療の選択肢がとても増えたので、手術せずに治せる患者さんが増えました。椎間板に酵素を注射して、飛び出したヘルニアをなくしてしまう注射も2017年から保険で使えるようになっています。
③は、われわれ医療関係者の腕の見せ所です。医療機関にかかって、診断をつけてもらい、説明を聞いて納得できるとそれだけで少し痛みが和らいだり、我慢できるようになったり、良い方に変化しますよね。安心、癒し、希望。神経痛は激烈ですが、周りにいる人には全くわかりません。見た目が元気そうなので、職場でも、家庭内でも理解してもらえずに悩む方もいます。医療機関に来て、優しい言葉をかけられるとそれだけで涙する方もおられます。
薬やブロックでどうしても良くならない。2週間以上激しい痛みが続くと、気持ちがめげてきます。さまざまな理由で、どうしても外科的な治療が必要になる方は、10〜20%程度おられます。
今日は一般的な腰椎椎間板ヘルニアの治療方法について概略を説明しました。病気のこと、手術になるまでの各治療(保存的治療)の方法、手術の方法については、これからも一つづつわかるように説明してみます。