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せぼねの手術の歴史

  • 2022年4月12日

1934年、LOVE法が報告されたのが、せぼねの手術の歴史の始まりです。あと12年でせぼねの手術の100周年を迎えます。これまでの歴史を、手術器械の発展に注目しながら振り返ってみます。

1934年、ラブ法(ヘルニア摘出の基本的な手術)がせぼねの手術の始まりです。せぼねの手術の歴史は、まだ100年に満たないのです。その後の発展は、光学機器の発展と共にありました。1977年、顕微鏡の出現により、深い術野の奥まで光を届けられ、拡大された明るい視野を得られるようになりました。これをきっかけに、光を届けるために大きかった傷も、どんどん小さくなります。1997年、20mm径程度の筒の中に内視鏡と光源を入れ、術野を観察する最初の内視鏡システムが登場します。2000年には土方法の延長線上にある、8mm径の筒に通す内視鏡システムが、持続灌流(ずっと筒の中に水を流しながら手術を行う)方式のシステムとして報告されています。

この90年で、10cm以上切らないとできなかったことが、8mmでできるようになりました。もともと2人でやっていた手術が、一人でできるようになりました。手術成績が同じであれば、患者さんにとっては歓迎すべき変化です。外科医にとってはいかがでしょうか?

もともと2個あった脳が1個に減り、4本あった手が2本に減りました。そのため、外科医のストレスは増えています。ラブ法はたいへん優れた手術法で、緊急時などには、今も採用されます。難しい手術を、高価な機器を揃えて、時間をかけて修行して習得する。内視鏡手術の時代は、外科医にとってそういう時代です。難しすぎて、身につかないということも発生することがあります。内視鏡手術の普及を阻む理由として、外科医にとって難しすぎるということが問題として発生しています。

泌尿器科領域では特に、現在、ロボット手術が普及しています。内視鏡手術の方がロボット手術より先に世に出たのですが、内視鏡が普及し切らないうちに、ロボットが導入され、ロボットの方が直感的に習得しやすい道具だったので、今ではロボット手術を中心に普及が進んでいます。情報革命が光学機器の発展の時代に続き、光学機器のみでは補いきれなかった器械の扱いにくさが、ロボットにより解消され、普及が促進されたのです。

せぼねの内視鏡手術は導入されて20年経ちますが、まだ、普及は十分に進んでいません。道具を使いやすくする仕組みを開発することで、爆発的な普及の促進が期待できます。今はまだ外科医に十分に与えられていない新しい情報の付加が必要です。

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