骨を削る時によく使うダイヤモンドバーの先端の使い方について、その単純な理屈について説明します。井須先生曰く、「腹で削る」を数字で説明してみます。
せぼねの手術で使うドリルは、先端にボールがついています。その直径は、内視鏡の場合、3.5mm~4.0mmです。ボールの表面には、ダイヤモンドの砥石がついています。砥石の大きさは数種類準備されています。工学では、このような仕組みでものを加工する方法を「研削」と言います。医学では、骨を削る行為そのものを、骨切除とか骨除去などと言います。ちなみに”切削”という工学用語は、刃物でものを加工することなので、スチールバーという、刃が3〜4枚ついているドリルの先端を使って骨を削る行為は切削となります。
ドリルバーはモーターで回転します。内視鏡手術用は1分間に約16,000回転します(16,000rpm: round per minuteと表現します)。ちなみに顕微鏡用は64,000rpm。回転軸の長さは、内視鏡用250mm、顕微鏡用85mm。
計算してみますと、4mmのダイヤモンドバーが16,000rpmで回転すると、その赤道面のある点は、自転車と同じくらいの速さで動いています。その一方で、先端部分、地球で言うところの南極点(北極でもいいです)は、回転軸からの距離がないので回っているだけです。骨を研削する時、削りたいところに、ダイヤモンド砥石が早い速度でたくさん当たると効率が上がる。ですから、削りたいところに「ドリルの腹を」当てると言う井須先生のお言葉は、理に適っているわけです。
では、実際に、病気の場面で、この技はどう活用できるでしょうか。これは、次の話題に回します。