• 手術の数値化・視覚化から、人をもっと深く知る。

手術の数値化2 有限要素法

  • 2022年4月7日

先週、手術の数値化1「骨研削の数値化」で、人とロボットの違いに触れました。今回は、手術の数値化のもう一つの柱、「有限要素法による除圧効果の検証」について説明します。

左が手術前、右が手術後

もともと有限要素法(Finite Element Method:FEM)は工学分野で開発され、設計段階でどこに負荷がかかるかを計算、改善に役立てていました。下の左図のように、色々な計算方法があります。固定する場所、力をかける場所、どのような負荷をかけるか、素材は何か、計算方法は何を選ぶか。素材を決めると、その素材の変形に関わる定数を二つ入力します。

1970年から工業分野では活用されていました。
自分でも計算出来る時代にはなっています。

右の4つの絵は、腰の骨の3Dモデルです。Fusion360というCAD/CAEソフトでわたしがコツコツ作ったモデルです。これでモデルを完成させて、計算しようと始めたのですが、独学ではたいへんでした。ので、静岡MODIのAVIVA(https://aviva.co.jp)、パソコンスクールに通いました。1ヶ月通いましたが、これ以上に仕上げるのは厳しいと判断、専用ソフト、プロに相談だと決断しました。ヒトの骨専用に開発されたMechanical Finderを採用し、株式会社計算力学研究センター(https://rccm.co.jp)の原先生にご指導いただきました。

腰椎のモデルと頚椎のモデルを計算し、論文にまとめました(Asian J Endosc Surg. 2020; 1-8. https://doi.org/10.1111/ases.12879)。有限要素法をヒトの身体に活用する利点は、今ある検査では再現できない立った状態や動いた状態で痛みが出る時の神経の様子が評価できること、相対値ではあるがどの程度に外科治療の効果があったかを数値化できること、実際に力がかかる場所に色をつけて視覚化できることの3つです。

現時点での有限要素法による評価法の限界点は、ソフトが高価であること、使いこなすのが難しいこと、評価のモデル作成・計算に労力・時間がかかること。現在の臨床現場に、術前の評価として用いるにはまだハードルが高い。この限界をいかに下げていくかは、われわれのこれからのお仕事です。

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