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大好きな研究テーマ:ドリルの使い方

  • 2022年4月11日

サッカー選手ですと、パスが得意な人、ドリブルが得意な人、ディフェンスが得意な人、シュートが得意な人とそれぞれに持ち味、こだわりがあります。外科医にもこだわりがあります。わたしはドリルの使い方にこだわりがあります。

これまでたくさんの先生に手術を教わってきました。顕微鏡手術の修行時代に教わった3つの言葉が、今のドリルの使い方やドリルの先端にかかる力の測定の基礎研究に影響を与えています。①ドリルを安定させる、②バーの腹で削る、③削っている音を聞けばわかる。この三つです。

①ドリルを安定させる

内視鏡下にドリルを使う

ドリルの先端を決してブレることのないよう、安全に操作する。この基本中の基本を徹底されたのは花北順哉先生(https://heiseihp.com/)です。顕微鏡下の手術では、2人で手術を実施します。術者と助手の4本の手が手術を展開します。骨を削る場面では、そのうち2本をドリルの操作に、1本を注水、1本を吸引に使います。まだかけ出しで麻酔の研修中、花北先生の術中の立ち姿にはとても惹きつけられました。美しい背中、力みのない手足。まるで剣の達人のような雰囲気に見入ったものです。

②バーの腹で削る

この言葉は北海道へ手術研修に訪れた時、井須豊彦先生(http://t-isu2004.la.coocan.jp/)から教わりました。ドリルの先端は丸いバーになっています。「その赤道面を使いなさい、先端で押さないように。」と研修医の先生に指導していたのを聞きました。せぼねには、神経が通っています。硬いもの(骨)の向こうに柔らかくて、大切な機能を備えた組織(神経)がある特殊な環境です。その大切な機能を持つしかも既に病気で弱っている神経を決して傷つけることなく、効率よく骨を除去する。豊かな経験から紡ぎ出された言葉です。

4mmのドリルの先端

③音を聞けばわかる

ハイスピードカメラで観察

「チューイン、チューイン、チューイン」って音がしてれば、いいんだよ、大丈夫、部屋に入らない。音でわかる。こう言われたのが、橘滋國先生(http://www.kameda-kyobashi.com/)。ドリルの先端の径は、2.0~4.5mm程度で0.5mm刻みです。ダイヤモンドバー、スチールバー、材質・形状には各種あります。どのようなバーを使っていようとも、音で、術者がドリルとどの程度馴染んでいるかはわかるという話です。なるほどと納得した覚えがあります。

このドリルの使い方の大切な3要素を、詳細に分析する、そんな医工連携の研究テーマを掲げたい。研究テーマを決める時に、この素晴らしい教えを「数字」で、「画像」で表現する方法を開発したい、と強く思いました。ドリルの先端に起こっていることの分析について、これまでわかってきたことを、今後、3回に分けて、さらに詳しく説明してみます。

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